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トロント大学での講演(報告)

2019年2月7日、トロント大学において「日本の新しい政策」の表題で人口危機に直面する日本の移民政策について語った。講演要旨は以下の通り。

5名のトロント大学教授、約60名のトロント大学の学生が私の話に耳を傾けた。講演終了後、多数のコメント、感想が寄せられた。「大変感銘を受けた」「坂中さんが提唱する移民国家ビジョンは素晴らしい」など称賛の言葉をいただいた。

講演の前、世界的に著名なカナダのジャーナリストで、「カナダは今の3倍の移民を受け入れるべき」と主張する著作があるDoug Saunders氏の取材を受けた。私から、「日本の移民国家ビジョンの特色」「カナダと日本が協力して世界の移民政策を牽引していくことの重要性」について語った。

私は彼と意気投合したと感じた。別れに際して Saundersさんは、カナダ最大の新聞「THE GLOBE AND MEIL」のコラム欄に「坂中英徳移民政策論」につて書くと述べた。また、カナダの移民政策担当の大臣を紹介したいと述べた。

初めてのカナダ訪問で多くの友達ができた。カナダの知識人と日本の知識人は「移民政策」という共通のテーマを通して緊密な関係を築くことができると確信した。

          トロント大学での講演要旨

(1)1200年続いた移民鎖国の時代は終わった。日本の歴史を画する移民社会を創る時代が始まった。安倍晋三首相が国会で「外国人との共生社会の実現」を語る時代に入った。

2018年12月20日、天皇陛下お誕生日に際しての記者会見において平成天皇は、日本の外国人の受け入れのあり方に関し、「日系の人たちが各国で助けを受けながら、それぞれの社会の一員として活躍していることに思いを致しつつ、各国から我が国に来て仕事をする人々を、社会の一員として私ども皆が温かく迎えることができるよう願っています」と、移民社会の未来を照らす指針を示された。日本史に残るこの金言は移民政策の核心を突くものである。私たち日本人は社会の一員として移民を温かく迎える覚悟がいる。

(2)もはや一刻の猶予も許されない。人口危機が深まった日本は沈没寸前の危険水域にある。

政府が移民鎖国主義に固執すれば、人がいなくなった地方自治体の消滅や、人材獲得が困難になった中小・零細企業の倒産が相次ぐ。政治家は移民の助けを求める国民の悲鳴に耳を傾けるべきだ。政府は外国人材を各方面に潤沢に供給するため早急に移民開国を決断すべきだ。

出生者人口の激減で大量の移民を最も必要とする日本が、50年間で1000万人の移民(難民を含む)を受け入れると、世界に約束する時がきた。世界の人びとは、移民・難民に寒風が吹き荒れる中、「人種や宗教の違い乗り越えて人類が一つになる移民国家の理念」(人類共同体思想)を掲げて立ち上がる人道移民大国の出現に歓呼の声をあげるに違いない。

(3)日本型移民社会とは

私が提唱する「日本型移民社会」とは、欧米の移民国家が移民の社会統合に苦悩している状況に学び、日本的な「和」を重視しながら、社会的包摂を政策的にしっかりと保障していく社会である。まず、日本語や社会的慣習についての教育から始まり、専門知識や技術の習得など職業訓練を経て、それぞれの分野で活躍してもらい、安定した生活ができるようになった3年後、5年後というような段階で、永住を許可し、希望すれば国籍を取得できるようにする。

農業・林業・漁業などの第一次産業分野は後継者難から就労人口が激減している。建設や製造業や流通分野も人手不足が深刻だ。大企業を支える中小零細企業が後継者難でつぶれていく。こうした部分こそ移民政策で支えるしかない。

移民政策を取ることによって地方コミュニティの崩壊危機を脱する地域が増えるであろう。東日本大震災後も全国各地で記録的な地震や台風などの自然災害が発生しているが、若い世代が少なく、高齢者が多数占める地域に犠牲者が集中している。コミュニティが崩壊寸前の地域社会は災害に持ちこたえる体力がなくなった。若い移民を農業や漁業の在留資格で受け入れ、速やかに永住を許可し、移民として迎えるしか、第一次産業の生き残る道はない。