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やり残したことがいっぱいの人生を誇りに思う

 私の使命は移民国家理論の完成で終わらない。世界最高レベルの移民社会をつくる仕事が残っている。国家百年の偉業を余すところなく達成すれば坂中移民政策論は百点満点の成果をおさめることになる。だが、夢が全部かなうような人生は私の好みではない。功成り名を遂げるような人生は嫌いだ。私がやり残した仕事は政治家と国民の責任で成し遂げてもらいたい。言いたいことを言って後のことはよろしくお願いするという態度は無責任きわまるという批判があるかもしれない。そのような批判は甘んじて受ける。

 20代の頃からいい事ずくめの人生などこの世に存在するはずがないと思っていた。天命を知る年齢になった今も艱難を玉にして前に進むのが自分にふさわしい生き方だと思っている。

 やり残したことがたくさんある人生を誇りに思う。それは大きな夢を持って生きたことの何よりのあかしだ。国家公務員時代、自分が公言した政策は自分の責任で実現すると国民に約束した。そして政策提言の大半を実現させた。しかし、権限も何もない無力な移民政策研究所所長の時代の私は、有言実行の考えを改めた。たとえば人類の悲願である人類共同体世界の創造は未完成交響曲で終わるのが宿命である。

 移民革命という命がいくらあっても足りない主題に手を付けた以上、継続的に論文を発表して世論を味方につけるしかないと一念発起した。それを続けているうちに執筆活動が習慣になった。それがただ一つの生きがいにもなった。論文を書いている時間がいちばん楽しい。一冊の本を書き終えるといつ死んでもいいという気持ちになる。だがほかに何もすることがないから直ちに新しい本の執筆に取りかかる。この10年ほどはその繰り返しの日々を過ごした。臨終の日のありかたを研究している私は論文を執筆中に冥途への旅立ちが訪れれば最高と考えている。

 移民政策論文を書き続けて移民国家への道をつくり、日本型移民国家の指針となる基礎理論の完成を見た。世界の頂点に立つ移民国家日本の完成は、100年後の地球市民時代に生きる日本人の手にゆだねたい。

 移民に対する思いやりの心が豊かな日本人なら、私のやり残した仕事を含め、すべて実現してくれるにちがいないと信じている。世界を牽引する移民国家に上り詰めた日本が世界各地で活躍する近未来の世界を空想すると胸が躍る。