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移民の定義

わたしは「移民」という言葉を、世界の常識に従い、「入管法に定める永住許可を受けた外国人」の意味で用いる。米国移民法における「グリーンカード取得者」と同じ意味である。なお、「移民」(永住者)の概念と「国民」(国籍・市民権)の概念は密接に関係するが、法律上は別物である。

欧米諸国の外国人の受け入れの歴史を見ると、最初は奴隷として、その後は労働力として外国人を入れてきた。現代の世界では、移民(永住者)として、同じ人間として、社会の一員として外国人を迎えるのが主流である。移民政策が人道にかなう最善の外国人受け入れ方法とされている。

たとえば、第二次世界大戦後一貫して外国人を労働力として入れてきたドイツは、2005年に移民国家宣言を行なった。以後、外国人に対するドイツ語教育に力を入れ、外国人を永住者の地位で入れる移民政策を積極的に展開し、今ではヨーロッパ第一の移民国家の定評がある。

外国人労働者は、産業界が外国人を労働力として、必要なときに入れて必要がなくなれば追い返すものである。多くの場合、人間として遇されることはなく、低賃金の労働力としてこき使われる。実際上は「奴隷」とあまり変わらない実態も見られる。

移民は日本に永住する外国人である。将来国籍を取得する可能性の高い外国人である。移民は社会の一員として納税義務をはたし、社会保障制度に加入する。憲法上国民固有の権利とされる選挙権・被選挙権・国家公務員就任権以外の権利を有する。移民は、社会に溶け込み、地域の経済と安寧秩序を支えてくれる。

国民の減少が続く日本の外国人政策は、国民の増加につながる移民政策以外の選択肢はあり得ない。将来の国民として、生活者として、働き手として、移民とその家族の入国を認めるのが、人口減少社会の正しい外国人の受け入れのあり方である。

今日、政治家、官僚、学者、研究者、ジャーナリストの間で「移民」という言葉が市民権を得た。近年、「移民」「移民政策」と銘打った論文、著作が数多く見られるようになった。たとえば明治31年創刊の『三田評論』(2019年7月号)は「『移民社会』をどう捉えるか」の特集記事を組んだ。ここ最近のメディアやネットの世界おいて「外国人労働者」に代わって「移民」が主役に躍り出た。

「移民」の受け入れに消極的な政府も、公文書で「移民政策はとらない」と強調し、「移民政策」の広報に一役買っている。そして、2018年10月、国会の本会議で移民政策をめぐって議論の幕が切って落とされた。

私はこの11年間、「一般社団法人移民政策研究所所長」の肩書きで、「移民」「移民政策」「移民革命」「移民国家」「日本型移民政策」「移民1000万人構想」「人口崩壊と移民革命」「移民国家の世界的展開」「日本の移民国家ビジョン」などの用語を駆使して論文・著書を発表してきた。加えて、2013年の春からは連日、ネット世界でこれらの用語を使って日本型移民国家ビジョンを積極的に論じている。内外のメディアの取材に対しても同じ姿勢を貫いている。

なお、「奴隷労働者」と近縁関係にある「外国人労働者」という言葉を使うメディアからの取材はすべて断っている。この立場を堅持した結果、「外国人労働者」という言葉の使用にこだわる日本の主要メディアに私が登場することはない。「移民政策」という言葉しか使用しない外国メディアに移民政策研究所所長が頻繁に登場することになった。ちなみに欧米の知的世界においては「奴隷労働者」を連想させる「外国人労働者」という言葉は禁句になっている。